ワッペンは「紋章」・帰属組織を象徴しブランドイメージを伝える
シリコンワッペンはアウトドアブランドやスポーツ用品ブランドによく使われるワッペンです。ブランドネームを表示するタグとしてはもちろん、ファスナーの引き手などにもよく使われます。
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「ワッペン」とは
シリコンワッペンの詳細に入る前に、「ワッペン」という言葉について簡単に紹介しておきます。
ワッペンはドイツ語で「紋章」を意味する Wappen から来ており、それを英語読みしたものです。ドイツ語の元々の発音は「ヴァッペン」に近くなります。
「紋章」ですから、中世から貴族や諸侯の「家紋」のようなもので、軍隊の旗印などとして使われました。そのため、「盾」の形を模した形状に、鷲や獅子など勇ましいイメージのシンボルが描かれることが多いです。もちろんバラの花など植物のシンボルが描かれることもあります。
現代でも、世界各国の軍隊では部隊ごとに紋章を決めて軍服や装備品にあしらっています。日本の自衛隊も例外ではなく、特に航空自衛隊では広く採用されています。警察でも、制服には都道府県警ごとに決められたワッペンを付けます。
また日本では私立学校を中心に、建学理念などを象徴する紋章を決めて制服ブレザーの左胸あたりにワッペンとして縫い付ける例がよく見られます。
ワッペンの形態いろいろ
上のような学校の制服に付けるワッペンだと「刺繍ワッペン」が主流ですが、そのほかにも作り方はあります。
レピアワッペン
織りネームタグやプリントネームタグが基本となっており、これらに対して裏張りや型抜きなどをほどこしてワッペンの形に仕上げます。刺繍よりも細かい表現が可能です。より小さいサイズにも対応します。
樹脂含浸パルプワッペン
デニムパンツのポケット部分などに付いているのをよく見かけるタイプです。プリントネームがベースとなっており、樹脂をしみ込ませて硬さを持たせると同時に、プリント面の補強もおこないます。使い込むにつれて「古味」がかもし出されていく点も特徴です。
本革、合成皮革ワッペン
本革、または合成皮革のベースに、焼き印、型押しなどで立体感を持った刻印をほどこすタイプです。印刷との組み合わせも可能です。ねらった雰囲気に向けて革の種類を選ぶこともできます。本革には自然のバラつき、色むら、傷があり、これらを活かしたデザインも味があります。
高周波ワッペン
シルバー、ゴールド、ブラスなどの金属製ロゴもワッペンのひとつです。アウトドア関連で言うと、たとえばゴアテックスは靴のアッパー部分に「GORE-TEX」と刻印した小さな金属のプレートを付けることが多いです(衣服だと織りネームタグのこともあります)。マット質感を持たせる加工などが可能です。
シリコンワッペンとは
上記のような制服に縫い付けるようなワッペンはフェルトのような厚みのある布製が主流ですが、シリコンワッペンはそれとはかなり異なるイメージと質感を持ちます。
製法がまったく異なるからです。
シリコンワッペンは、金型にシリコンゴムを流し込んで固めて作ります。流し込む素材はシリコンゴムのほか塩化ビニール(PVC)のこともあり、そのケースでは「PVCワッペン」と呼ばれます。
つまり、シリコンゴムで形成されたワッペンがシリコンワッペンです。
シリコンワッペンのはたらき
できあがったシリコンワッペンは厚みのあるゴム製で、文字やロゴ、図柄を立体的な刻印のように浮かび上がらせて表現します。
たとえば、登山靴やスニーカーなどのソール(靴底)に立体的な文字で「VIBRAM」と刻まれた黄色いシリコンワッペンを見たことはないでしょうか。ヴィブラム(Vibram)社はイタリアのソール専門メーカーで、世界各国の名門ブランドから外注を受けてソールを生産・供給しています。同社のビジネスがそれだけで成り立っているということが、世界中の名門ブランドが同社に寄せる信頼がどれほどのものか、よく物語っています。
逆にいうと、ヴィブラム社は自社製ソールに自信と誇りを持ち、その自信と誇りを込めてソールに黄色いシリコンワッペンを刻印しているのです。ヴィブラム製ソールを採用したその靴のメーカーもまた、それのおかげで製品価値が高まっていることへの謝意を込めて、他社のものであるシリコンワッペンを堂々と刻印しています。
購入を考えるユーザーもまた、その靴を手に取り、裏返して「うん、ヴィブラムソールだね」と確認し、安心して購入できるわけです。
シリコンワッペンはこのように、ブランド名の表示を通じて、メーカーの製品にかける自信と誇り、品質の保証を伝え、ユーザーの信頼と安心を勝ち取る役割を果たします。
シリコンワッペンの素材と特徴
シリコンワッペンは、金型にシリコンゴムを流し込んで固化して形成します。そのため、プリントネームタグにシリコンインクで印刷するケースよりもずっと高くくっきりとした立体感が出せます。
そのために使用されるシリコンゴムの素材は2系統あります。
マイクロファイバーベース・シリコンゴム
シリコンワッペンの特徴は、立体的に立ち上がったエッジのシャープさにあります。このシャープなエッジをマイクロファイバーベースの生地に製作すると、繊細でありながら存在感のあるブランドネームタグを作ることができます。サイズとしても、かなり小さいものから大きなものまで、多彩にできます。ファスナーの引き手にするような、ごく小さなものも作れます。縫製しやすいタグになります。
シリコンベース・シリコンゴム
シリコンゴムのベースにシリコン成形によるロゴをレイアウトするケースです。マイクロファイバーを使ったものにくらべると、コシが強くなります。そのぶん針が通りにくく、縫製はしにくくなりますが、アウトドア用品には似つかわしいヘビーデューティー感が出しやすくなります。
2段、3段といった多段化など、複雑な形状にも対応可能です。
形状や表現の種類
シリコンワッペンは、紙や布といった素材の制約を超えた応用が可能です。たとえば、金属片や樹脂片を立体的なシリコンゴムの塊の中に内蔵することができます。ファスナーの引き手にするケースなどではその技術が応用されます。
むき出しの金属面にシリコンゴムをコーティングするような感覚での応用も可能で、そうすると金属製の製品表面にラバーのような感触を与えることができます。ある程度の耐衝撃性も同時に持たせられますので、スマートフォンのケースなど精密機器をカバーする用途にも使えます。
金型のデザイン次第で形状の自由度が高く、円柱状、涙滴型などの立体形状も作れます。たとえば、鯛の形をしたシリコンゴムにUSBメモリーを埋め込んでやれば「鯛のメモリー」ができます。柔軟な発想に対応できるのがシリコンワッペンです。
また、多彩な表現への対応力があるのもシリコンワッペンの特徴です。かなり細かい線や文字も表現できますし、反対に太く厚くすることもできます。さらに、非常に細いすき間をはさんで別の色を入れることもでき、複雑なパターンでも表現できます。
立体的なシリコンワッペンは存在感が命
シリコンワッペンは、たとえ小さなものであっても強烈な存在感を放ちます。もちろん、赤や黄色、オレンジといった目を惹きやすい色を多用し、ユニークなレンタリングでロゴ化された字体がくふうされていることも大きく影響していますが、何よりもその立体感が強烈な存在感の源です。
目にしたり手に取ったりした消費者・ユーザーへのアピール力は絶大ですので、上手に活用しましょう。